小林祐介(THE NOVEMBERS)スペシャルインタビュー【前半】

小林祐介(THE NOVEMBERS)スペシャルインタビュー小林祐介(THE NOVEMBERS)スペシャルインタビュー

いよいよスタート地点となる東京公演の開催が来週に迫ったTHE NOVEMBERSによる自主企画“首”TOUR Oct 2018。フライヤーデザインも手掛けたメンバーの小林祐介に2006年に第一回が行われた“首”の発端、なぜ今各地で対バン形式のツアーとしてパワーアップされるのか、そして会場でリリースされるBorisとのスプリット12インチ制作秘話など縦横無尽に語ってもらいました。
Interview : 石井恵梨子 / Photo : Ray Otabe

小林祐介(THE NOVEMBERS)
2005年結成のオルタナティブロックバンド、THE NOVEMBERSのヴォーカル / ギター。THE NOVEMBERSは2007年にUK. PROJECTより1st EP 「THE NOVEMBERS」でデビュー。様々な国内フェスティバルに出演。2013年10月からは自主レーベル「MERZ」を立ち上げ、2014年には「FUJI ROCK FESTIVAL」 のRED MARQUEEに出演。海外ミュージシャン来日公演の出演も多く、RIDE,TELEVISION, METZ, NO AGE, Mystery Jets, Wild Nothing, Thee Oh Sees, Dot Hacker, ASTROBRIGHT等とも共演。2015年10月にはBlankey Jet CityやGLAYなどのプロデュースを手掛けた土屋昌巳を迎え、5th EP「Elegance」をリリース。2016年は結成11周年ということで精力的な活動を行い、Boris, Klan Aileen, MONO, ROTH BART BARON, ART-SCHOOL, polly, Burgh, acid android, 石野卓球, The Birthday等錚々たるアーティストを次々に自主企画「首」に迎える。2016年9月に6枚目のアルバム『Hallelujah』をMAGNIPH/Hostessからの日本人第一弾作品としてリリース。11月11日には結成11周年記念&アルバムリリースツアーの国内ファイナルとして新木場スタジオコーストワンマン公演を行った。2017年7月、FUJI ROCK FESTIVAL '17へ出演。2018年5月、新作EP『TODAY』をリリース。
小林はソロプロジェクト「Pale im Pelz」や 、CHARA, yukihiro(L'Arc~en~Ciel), Die(DIR EN GREY)のサポート、浅井健一と有松益男(Back Drop Bomb)とのROMEO`s bloodでも活動。

── 10月11日の〈首〉はBorisとのツーマンで、同時にスプリット12インチの「unknown flowers」もリリースされますね。

「はい。Borisに関しては、まずスプリットを出そうっていう話が先で。けっこう前からあったんですよね。Borisのツアーに僕らが呼んでもらった頃だから……2015年とか、2014年ぐらいか」

── あ、温めていた時間がだいぶ長いんですね。

「そう。Atsuoさん(Boris/ドラム)と『スプリットとかいつか出せたらいいね』って話をしてて、そのしばらく後には曲もできたって言われたんですね。『後はTHE NOVEMBERSの曲ができたら、いつでもいいからやろう』って。僕ら、まぁいつも曲は作ってますけど、スプリットって初だし、コンセプトをちゃんと固めないと足元が定まらないなっていうところで時間が経ってしまって。で、今回ユニットの2デイズがあって、1日はBorisとやれるってことが決まったから、あのスプリットの着地点をこの日にするぞって。そこからいろいろ見えてきて、ようやく今に至るっていう」

Boris - “Absolutego”

── 珍しいですよね、Atsuoさんがそんなふうに積極的になるのは。

「そう……ですかね? 普段のAtsuoさんがどうなのか僕は知らないから。でもBoris自体はけっこうコラボしてるじゃないですか。Sunn O)))とか、メルツバウとか。そのラインナップの一個に加われたのは、いちファンとしてちょっと誇らしいというか」

Sunn O))) & Boris - “Etna”

── いや、Sunn O)))やメルツバウとのコラボとは意味や見え方が違っていて。Atsuoさんがいわゆるロック・スタイルのバンドに接近することは今までなかったと思いますよ。取材でも、他のバンドを批判することはあっても褒めたりしない人だったし。だから世代も違うTHE NOVEMBERSとここまで距離が縮まるのは意外でした。

「あー、そうなんですね。以前フィーバーの企画で僕らとBorisと、あとはベンジーさんのRomeo's Bloodで一緒にやることがあって。その時に初めて会ったんですけど、最初から『今日は楽しみにしてきました』って挨拶してくれましたし。あとライブ終わった後には『暗黒だ!思ったより百倍暗黒だったよ!』みたいに言ってくれて(笑)。そこからすごく仲良くなりましたね」

── 何かが琴線に触れたんでしょうね。

「でもBoris自体も変わったバンドだけど、Atsuoさん自身も独特ですもんね。ああいうコンポーザーの人ってなかなかいない。今回のスプリットも『お互い新曲と、そのカバーをやって、一曲ずつコントラストが付くようなものをやったらいいんじゃないかな』って言われて。そういうアイディア自体も新鮮だったし」

── どちらが原曲を作ったのかはわからないままで。まぁ、聴けばなんとなくこっちだろうなって想像はつくんですが(笑)。

「あ、ほんとですか? もう歌詞で一目瞭然みたいな(笑)。でもカバーも含めてTHE NOVEMBERSが担当した2曲のテーマにあるのが……あんまり伝わらないかもしれないけど、ゲイリー・ニューマンなんですよ」

── ほう(笑)。そのココロは?

「ちゃんと、いいふうに年を取れたゲイリー・ニューマンっていう仮定。今現在のゲイリー・ニューマンは僕としてはちょっと残念なので、あったかもしれない理想のゲイリー・ニューマンっていう」

── このハンマービートみたいな質感は今までなかったものですね。

「そう。タンジェリン・ドリームとか、ああいうノイズっぽいテクスチャーがいいなぁと思ってる中で、ゲイリー・ニューマンを経由してスキニー・パピー、ミニストリーまで行こうかと(笑)。ポスト・パンクやニューウェイヴが好きなわりに、あんまりバンドでは掘り起こしてこなかったところですね。今まではハーモニーとかコードワークから曲を作ることが多かったんですけど、この一打、一個の楽器が持ってる一打のユニークさ、みたいなものにフォーカスして。これだけでずっと聴いていられる、みたいな、音そのものへのこだわりが今までよりも一番出たかなって思います。2曲とも」

── こういうインダストリアルっぽい音、機材が進化した今では、逆に出すのが難しいんだとか。

「そうなんですよ。参照にした音楽があって、出したい〈この感じ〉があったとして、似たような音を出すことはできても、〈感じ〉が出ないんですよね。機材が便利になりすぎて、重箱の隅まで手が届きすぎるというか。で、その時代背景とかミュージシャン事情とか、あとは機材のマーケット市場をいろいろ調べていくんですけど、やっぱり……すごくハイグレードな機材をみんな揃えてたわけじゃないんですよね。新しい音を一個ずつ組んでいく教養もなかっただろうし。ほんと、叩き売りされてたような一昔前の機材を一一今はヴィンテージになってますけど、当時は『これだったら安く買える、ドラムセット買うよりもこれでやっちゃおう』みたいな。で、やっぱり音がショボいから『パンクスピリットはこれじゃ盛り上がらない、じゃあ歪ませちゃえ!』みたいな(笑)。想像ですけど、何か裏付けがあって、青写真があって、ちゃんと着地した人は少ないんじゃないかな。試行錯誤しながら、わりと力技、アイディア一発で生まれたような。そういうことっていろんなジャンルであるんだろうなって思いましたね。テクノとかも」

小林祐介(THE NOVEMBERS)スペシャルインタビュー

── なるほど。面白いです。ありそうでなかった音になったのは、それをメンバーが求めていたのか、Borisとやったからこういう結果になったのか、どちらに近いですか。

「あ、両方ですね。せっかくBorisとやるからには、聴いたことあるようなやつはやりたくなかったので。世の中的にどうかはさておいて、少なくとも自分たちにとってエキサイティングかどうかっていうのは判断の基準にしてたような気がします。「Journey」もシンセベースをメインで使ったり、自分たちでも新しい感じでしたね。この2曲はもちろん、今後作っていくものに何かしら影響していくでしょうし」

── では、Boris側の2曲はどう受け止めましたか。

「これは……裏話の部分がけっこう面白くて。最初にTHE NOVEMBERS側の曲をカバーしたバージョンは、低音の感じが全然違ったんですよ。もっと薄い、エッジーな音で。でもマスタリングの時にAtsuoさんが『やり直したい』って言い出して。エンジニアさんも『これ一緒の作品にしたらちょっとアンバランスになるかもね』って言い方をしてたんですけど、要はTHE NOVEMBERSの曲と並べた時に自分たちがちょっと弱く聴こえるかもしれない、ということだったと思うんですね。で、新しいバージョンはもう低音が鬼みたいに! 自分たちが逆に軽く聴こえるくらい、喧嘩腰の低音が来た(笑)」

── ははは。Borisならではの粘度というか、低音の粘着性。

「いやもう素晴らしかったです(笑)。笑っちゃいましたね。でも、お互いそうやって影響しあって、干渉しあってるのが効果てきめんにわかるというか。面白かった」

── この新曲たちは、当然、次の〈首〉で聴けるんですよね。

「はい。ただ……ライブでどうするかっていうことをまったく想定してなかったので。今、どうやってショウとして成立させるか考え中です」

── どうなるんですかね。特にBorisは蓋を開けてみるまで何が出てくるかわからなくて。始まるような予感……だけで一時間やったりしますからね、あの人たち(笑)。

「ほんとそうですよね(笑)。で、これ以上大きい音は出ないだろうって思った後からさらにでっかい音がドワーッと来たりする」

── ふふふ。ガチンコのツーマン、楽しみにしています。